「売るだなんてとんでもない。喜んでさし上げましょう」 ワラシに気づいた射的の店主が言いました。 「実は人形に導かれるまま全国を旅していたのです。リナさん、ルナさん、本当の持ち主に返してあげてください」 お母さんの人形を胸に抱くと、ワラシの三輪車は遠ざかっていきました。ティコティコティコ。しだいに透けていくワラシ。「ワラシが行っちゃう」「もう会えないの…」 ワラシの言葉が風にのってきこえてくると、ふたりはにっこり顔をあわせました。